“健康的な”リモートワークのために


ideaship 寒田 亮(産業カウンセラー)

 

 ここ数か月の間に、新型コロナウィルスの影響を受けて急遽リモートワーク生活を送ることになったワーカーの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。環境の急激な変化は、心理的にも大きな負担になります。

 弊社では創業以来、約8年間にわたってリモートワークを中心とする業態をとっており、筆者ももう、かれこれ4年半近く自宅で仕事をする生活を続けてきました。また、弊社で導入のサポートをしているWELLという規格は、主にオフィス空間を対象とした健康(ウェル・ビーイング)に関する認証を、企業や施主が得るためのものですが、在宅でのリモートワーク環境にも参考になる視点が数多く盛り込まれています。

 そこでここでは、筆者のこれまでのリモートワーク経験や昨今の状況なども踏まえながら、リモートワークを「健康的に」おくる上で参考となるような視点を記載します。

 

■まずは積極的に室内の空気の入れ替えを

 仕事をする場所の空気の質の良しあしは、健康のみならず、仕事のパフォーマンスにも影響を与えることが知られており、積極的に換気することがおすすめです。最近では、外出を控え、食事もご自宅でとる機会が増えているのではないかと推察しますが、実は調理によっても室内の空気の質は低下します。また、カビや有害微生物が増殖するリスクも下げることができますので、ぜひこまめに部屋の空気を入れ替えてみてください。

 

■光環境を意識して生活リズムを安定させる

 通勤がなくなると、どうしても生活が不規則になり、健康にも影響しがちです。朝や日中に太陽光を浴びると、体内リズムが安定することが知られています。また、深夜は仕事を控え、照明を暗めにするなど、睡眠を阻害しないような光環境にすることも、生活リズムの安定化に役立ちます。

 

■適度な運動でリフレッシュ

 近年よく言われるようになったことですが、机の前などでずっと同じ姿勢を続けていると血行が悪くなり、心身ともに悪影響を受けます。定期的にご自宅内を歩き回ったり、ご自宅内で筋トレ、ヨガなどの軽い運動に取り組むのもおすすめです。また、適度な散歩は、太陽光を浴びることもでき、いい気分転換にもなります。自然に触れられるような散歩もリフレッシュ効果が高く、おすすめです。

 ただし、新型コロナウィルスの感染リスクを下げるためには、マスクの着用や他者との一定の距離の確保、できる限り少人数で散歩することへの配慮も必要です。

 

■音に配慮して集中できる環境に

 騒音は集中力を阻害し、仕事のパフォーマンスや記憶維持に悪影響を与えることが知られています。現在一人暮らしをされている方にとっては、リモートワークは職場よりも静かに仕事に取り組むことができ、パフォーマンスが向上するかもしれません。

 一方、小さなお子さんがいらっしゃる方は、家族でカバーし合い、できる限り集中できる環境を整える工夫をされているところでしょうが、どうしても気が散ってしまって、いつもよりパフォーマンスが落ちてしまうのは無理もないことかと思います。この点、管理職の方には、これまで以上に個々のおかれた状況に寄り添ったコミュニケーションと仕事配分が期待されているといえるでしょう。

 

■「睡眠」、「雑談」、「ちょっと幸せになれる習慣」も健康的に働くカギ

 リモートワークをする環境について述べてきましたが、それ以外にも健康に働くためのヒントが研究されています。例えば、予防医学研究者の石川善樹氏と北里大学の西本真氏の監修のもとで電通が会社員1万人を対象に実施した調査では、健康に働くためのカギとして、「睡眠」、「雑談」、「ちょっと幸せになれる習慣」の3要素が挙げられています。

 この調査は2018年の平時に実施されたものではありますが、現在のような緊急事態宣言下にも十分通用するのではないかと感じています。生活のリズムを整えて「睡眠」をしっかりとるとともに、気軽に家族や同僚、上司と「雑談」ができる環境を整え、「ちょっと幸せになれる習慣」を生活に取り入れることで、ストレスの負荷を大きく緩和することができるでしょう。

 環境の急激な変化にもしなやかに対応しながら、このコロナ禍を乗り越えて参りましょう。

 

 

参考資料:

・WELLについて

 https://www.gbj.or.jp/well/about_well/

 

・電通による会社員1万人を対象とした調査

  https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2018/0904-009596.html